遠くへ(2)


 僕の学生生活は失敗の連続でした。友人も何人かはできましたが、勉強をまじめにする人ではなく、麻雀やパチンコを一緒にする仲間ばかりでした。特に僕のように地方から出てきた学生同士でよく遊び、また酒を飲みました。互いの下宿先で麻雀を打ちながら朝まで飲むこともありました。ただ、単位を得るための試験日が近づくにつれ集まりが悪くなっていきました。当然のことですが、留年をしないように、というより良い成績を修めるために試験勉強を始めるからでした。僕は夕食時に必ずビール、時にはウイスキーを飲み、それから勉強を始めるので頭に入らず、深夜になっても勉強を諦めて飲み続けました。そして試験日の前夜は、それが明け方までの深酒になり、当日遅刻する。当然単位を落とす。通常の講義も遅刻と欠席が多く、一年生の時に進級に必要な64単位のうち12単位しか取れませんでした。
 全部、酒のせいだと分かっていましたが生活は変わりませんでした。酒のおかげで出来たことは、バイト先で知り合った彼女と付き合うことができたことくらいでした。ただ、デートに遅刻する、約束を守れない僕はすぐにふられてしまいましたが。2年生になっても同じことを繰り返し、1年留年が確定した後期試験をきっかけに学校には全く通わなくなり、友達とも疎遠になりました。そしてその年の3月に学校を辞めました。親には電話で事後報告しました。母親が泣きながら「知らんわ、勝手にし」と言いました。
 警備員のバイトで5年間生活しました。遅刻して怒られ、夜勤では車の中で寝てしまい怒られました。同僚にも上司にも飲酒を注意されましたが、止められませんでした。仕事中には飲みませんでしたが、出勤の1時間前まで飲んでいました。仕事が終わってからも、学生時代と変わらない飲み方で朝までウィスキーをロックで飲みました。もう何もする気が起こりませんでした。会社をクビになり、別の警備会社に就いたものの、同じことの繰り返しで4年間働きましたが、連続飲酒で会社を3日間無断欠勤し訪ねてきた先輩にこの病院に連れてこられました。
 とりあえず今は、酒を止めてやり直したい気持ちとまだ酒を飲みたい気持ちの両方があります。今はわかりません。どこか遠くへ行きたいです。

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