実験/ネズミの楽園

1978年にカナダの大学が行った「ラットパーク(ネズミの楽園)」とよばれる有名な実験。 

ここでは、ネズミを居住環境の異なる二つのグループに分け、一方のネズミは一匹ずつ金網できた普通の実験用ゲージ(植民地)の中に、そしてもう一方のネズミは普通の20倍の広々とした場所(楽園)に雌雄16~20匹が一緒に入れた。楽園ネズミに提供された広場は、まさに「ネズミの楽園」だった。床には、巣を作りやすいように常緑樹のウッドチップが敷き詰められ、いつでも好きなときに食べられるように十分なエサも用意され、所々にネズミが隠れたり遊んだりできる箱や缶が置かれ、ネズミ同士の接触や交流を妨げない環境になっていた。
アレクサンダー博士らは、この両方のネズミに対し、普通の水とモルヒネ入りの水を用意して与え、57日間観察した。
その結果は実に興味深いものだった。植民地ネズミの多くが、孤独な檻の中で頻繁にモルヒネ水を摂取しては、一日中酩酊していたのに対し、楽園ネズミの多くは、他のネズミと遊んだり、じゃれ合ったり、交尾したりして、なかなかモルヒネ水を飲もうとしなかったのだ。

この実験結果こそが、「なぜ一部の人だけが薬物依存症になるのか」という問いの答えではないだろうか?
それは、自分が置かれた状況を「狭苦しい檻」と感じている人の方が、「楽園」と感じている人よりも薬物依存症になりやすいということ、つまり、ストレスの大きい状況下にある人ほど依存症になりやすいということである。

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